愛しているのにヒロインから離れなければと葛藤するヒーローがとても可哀想で切なかったです。その原因であるヒーローの過去と、ヒロインを狙う殺人鬼が誰なのか、読むほどに謎は深まるばかりでページをめくる手が止まらず、一気に読んでしまいました。こんなに最後の最後までハラハラさせられ、ハッピーエンドを切望した作品は久しぶりでした。

好きな作家でも裏表紙に書いてある内容によっては購入しない本もありますが、スーザン・ブロックマンは即購入するほど好きです。主人公のジェスが巻き込まれてしまう事件の犯人が知りたくて、一日で読んでしまいました。今までスーザン・ブロックマンの主人公の男性像は、強い男のイメージしかなかったのですが、今回のロブみたいに過去に苦しんでいる弱味のある男性も素敵に描かれていると思いました。

ヒロインがとても魅力的で、出会う男性陣がみなとりこになる程。その中でとてもミステリアスな男性とひかれあいます。そして二人にある事件が絡んできて、誰が犯人なんだろう?とドキドキしながら一気に読んでしまいました。とてもおもしろかったです。ヒーローは、いろいろな葛藤があって、悶々として暗かったけれど、ヒロインの気持ちがとても率直で共感しました。

ヒロインが愛した男性は連続殺人犯の疑いをかけられ、彼も何か秘密をかかえて謎めいている。ヒロインのまわりの誰もが怪しく、FBIは傲慢で・・・ドキドキというよりモンモンとしながら読み進みました。でもヒロインの強さと愛がすべての霧を振り払い「そうだったのか!」と清々しい後味を残してくれる一冊でした。

周りの誰もが怪しいと思い、ヒロインに忠告しても、当のヒーロー自身もヒロインに明かすことの出来ない過去を持っている。それが分かっていても最後まで自分の信念を貫くヒロインの芯の強さにとても惹かれました。周りに流されがちな自分の生き方を少し反省しています。

素敵な男性が現れたときのどきどきした高揚感は、いくつになってもかわらないものです。今回の主人公ジェスはシングルマザー。そんな彼女の元に越してきたロブは誰にもいえない過去を抱えた謎の賃借人。お互いに惹かれあっていくも、次々と起こるジェスに似た女性のむごい殺人事件と問題ありの夫、隣人が絡み合って、なかなか進まない二人。そんな恋愛と殺人事件が絡みあうスピーディな展開は、さすがスーザン・ブロックマンです。あっという間に引き込まれてしまいます。

怪しい・・・でも怪しすぎて絶対彼が犯人じゃないはず。これはロマンス本なんだし…。そう思っていても段々不安になってきて「きっと何か事情があるはずだ」と思いながら一気に読み終えました。やはり素敵な物語でした。

直感を信じるか?　情報を信じるか?　ミステリアスで自分を語らないロブに対して、該当する条件が一致する情報ばかりが増えるなか、自分を信じ、ロブを信じぬこうとするジェス。自分を守る為、愛する人に伝えれらない苦悩を抱えながら、彼女たちを守ろうとするロブ。両者とも互いを思いやり魅力的でした。最終局面のシーンは緊張感があり、スピード感を感じました。

魅力的なヒロインのひたむきな思い、自分の心と、愛する人を信じ続ける強い気持ちが全編を通して感じられ、サスペンスの要素もありながら、やはりこれはロマンス小説だ! と思いました。でも、サスペンスとしての魅力も十分! 作中に挿入された犯人の独白に、犯人はこの人では、いや、あの人かも、と面白いように翻弄させられてしまいました。二人の愛の行方と事件の結末の両方に最後の最後までハラハラさせられる「1冊で2度おいしい」作品です!