ダイナ・マコールといえばシャロン・サラさんの別名義ですが、この作品は、彼女のネイティブアメリカンをヒーローにした作品の中でとても好きな作品になりました。訳ありなヒーローと武器製造会社を経営する父を持つヒロイン。訳ありすぎるヒーローの謎にどんどん惹かれてしまうのは、ヒロインのみならず、読者も同じです。戦争を知らない世代として、読んだ後に考えさせられます。平和であるからこそ読んでほしいと思います。購入されましたら、是非とも巻頭の作者の一文を読んでください。心に残る文章だと思います。この作品を読んだ後はきっと何かが心に残ることになると思います。

愛する人達を奪われて、復讐のためだけに生きる孤独な男と、愛された記憶の無い女性が、出会い、惹かれあう。お互いの心情や、仇敵の心情もとても細かく描かれていて、読み応えのある作品でした。

あらすじを見てパラノーマル的な要素がある物語として読み始めたのですが、読み終わった後は「そうじゃないのかも」と思わずにはいられない気分で、すごく考えさせられました。最初のページの著者が書いたメッセージを見ただけで泣けてきましたが、愛する人を失った著者の願いがこの物語からひしひしと感じられ、とても心にしみました。それに彼女の書く作品のヒーローはいつも本当に素敵だなと思いました。本当にとても素敵な話だったので沢山の人に読んで欲しいと思います。

愛する妻と一族を惨殺した仇敵への復讐のためだけに生き続けてきました。お嬢様育ちで愛する妻とは似ても似つかないヒロインのはずなのに…。サスペンス的な要素は少ないですが、人生が生きるに値するものであること、そして輪廻転生、ソウルメイトの存在を信じてしまう、涙なくしては読めない物語です。

ジョン・ナイトウォーカーは長い間愛する妻と皆殺しにされた一族を思い暗い人生を復讐を果たすためだけに生きてきた。ある日、町で、美女、アリシアに出会う。彼女は父親のどす黒い秘密を知った為追われていた。何度も殺されかけたアリシアを救うたびにジョンは彼女に引かれて行く。思ってもいなかったアリシアへのこの思い。淋しさや辛さに耐えて生きてゆく彼への愛に揺れる二人の切ない恋心に感動しながら読みました。

なすすべなく命を奪われてしまった奥さんを思うヒーローの怒りと焦燥、恐怖と深い悲しみに胸が詰まります。ヒロインとの逃避行の中で互いに歩み寄り自分を見つめ直して新たな一歩を踏み出そうとする姿に心打たれました。ヒロインも正直で真っすぐな意志の強い女性です。しかし、やはり今回の主役はヒーローの再生が主題ですね。大切な人との日常がどれほど大切か考えさせてくれる優しい作品です。(ただし内容はあくまでもバリバリの復讐劇、この作家さんの作品に出てくる悪はほんとトコトン悪です。)
最後に、この作品を読んでいる時幾度となくヒーローの姿に今回の震災で奥さんを亡くして生きていたくないと泣いていたおじいさんの姿が重なって涙が止まりませんでした。被災した皆様が一日も早く落ち着いて心安らかな日常を過ごす事が出来ますよう心よりお祈り申し上げます。

読むにつれて、ヒーローの不本意ながらも長きにわたり憎むべき敵に復讐する機会を一人で探し出さないといけない悲しみと苦しさが感じられて、読んでいて切なかったです。そんな中でも敵の娘であるヒロインとの運命的な出会いが、これまでの人生を覆すくらい意義あることだったので、二人ともようやく幸せになれるかと思うと長年耐えたヒーローの忍耐強さに拍手でした。ハッピーエンド、ばんざい!!

面白い一冊でした。一気に読みました。ヒーロー、ヒロインの違う意味での孤独感にうるうる。惹かれあうシーンも読み応えがありました。さすが、ダイナ・マコールです!!

時代を超えて、愛する者の敵を追いつづける、ジョン・ナイトウォーカーと、はからずも追われる身になってしまったヒロインとの皮肉な出逢いと絡み合う二人の運命。この作品のテーマは、主人公ジョン・ナイトウォーカーの再生へのとてつもなく長い孤独な道のり…です。読み進めていくうちに、苦難の先に見える一筋の明るい光が感じられてきました。シャロン・サラの素晴らしい作品に出合えました。