ハーレクイン・シリーズ
ロザリンドは従者も連れず、徒歩でファロン公爵の屋敷にたどり着いた。 “悪魔公爵”と噂される男の屋敷を女が1人で訪れるなど正気の沙汰ではないが、誰も頼る者のないロザリンドにとって、ファロンだけが残された救いだった。ギャンブル好きの父は常に金に困っており、金目のものならなんでも売る。そしていま、娘さえも売り飛ばそうとしているのだ。好色な年寄りの貴族に。私があの老人のものになるより早くファロンと結婚してしまえば、父も手を出せない。突拍子もない申し出を携えて現れた娘に、ファロンは思いがけない提案をした。妻としてふさわしいかを見る試験に合格すれば、おまえを娶ってもいいと。いったいどんな“試験”なのかとロザリンドがおそるおそる訊くと、公爵は答えた。「おまえがわたしの愛撫によって絶頂に達するところを見たい」
社交界デビュー以来、そそっかしさが仇となり不名誉な評判に悩むグレースは、その日もドレスの裾を踏んで転び、二人連れの紳士をレモネードでびしょ濡れにしてしまった。 二人の紳士は丁重に詫びるが早いか、グレースを近くの部屋に連れていくと……ドアを閉めて施錠した。 グレースは息をのんだ――閉じこめられてしまった! きっと陵辱されるのだ。 「きみに大切な話があるんだ。内密に」えくぼの素敵な紳士はアティクスと名乗り、傍らに立つ美貌の紳士を紹介した。「彼はフィッツジェラルド子爵」 子爵が真っ青な瞳で射抜くようにグレースを見つめ、燃えるような熱い手を太腿にのせてくる。 「ぼくたちは、しばらく前からきみのことを花嫁候補に考えていた」 グレースの心臓がびくんと跳ねた。“ぼくたち”ですって……? 「ぼくたちはすべてを分かち合う――女性も含めてね」 グレースの胸が早鐘を打ち始めた。「あの……つまり……結婚したら、夫婦のベッドにはあなたがたふたりがいる……ということ?」 「そうだ。ふたりできみに触れ、キスをし、舐め、快感で立てなくなるまで突きまくる」
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- 頁数
- 224頁 / 文庫判
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- 発行日
- 2021年01月05日
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- 定価
- 730円(税込)
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- ポイント
- 0pt
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- ISBN
- 978-4-596-41511-0
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- 書籍番号
- ELB-1
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