突然ですが、マーガレット・ミッチェルによる長編小説『風と共に去りぬ』をお読みになったことはありますか?　アメリカ南北戦争を舞台に、主人公のスカーレット・オハラはその気丈さと美貌で激動の時代をたくましく生き抜きました。不朽の名作として広く世界で親しまれており、ヴィヴィアン・リーがスカーレット役を演じた映画をごらんになった方も多いでしょう。 今回ご紹介するシャロン・サラ作『女相続人ケイシー』に登場するケイシーは、典型的な南部女性だと表現される箇所があり、スカーレットを彷彿とさせます。祖父の莫大な遺産を相続するために48時間以内の結婚を迫られたケイシーは、嫌いな弁護士と結婚させられるくらいなら、とダウンタウンのバーを訪れます。そこで出会った男性と1年間の契約結婚をするのですが・・・。この行動力、まるで片思いをしていた男性に振られて別の人と結婚してしまうスカーレットに共通するものがありますね! またケイシーは祖父から会社経営術も教え込まれていたため、会社を支障なく引継ぎ、兄姉への多すぎる援助まで独自の判断でストップさせ反感を買います。スカーレットも二度目の夫の代わりに会社経営をこなして富を築いたものの、当時の男性上位社会からは不評を買いましたね。 どちらの女性主人公も突飛で大胆な行動をしたり、自分勝手と評されてしまうような態度を取ったりもしていますが、反面、優しさや気遣い、女性らしさも描かれています。強いから優しくなれるということでしょうか。 高いプライドを持っていて、どんなに傷付いても決してそれを表に出さないとも言われる南部女性。けれど、ふいに見せる弱さとのギャップが人間として魅力的なのではないでしょうか。