ワルブラクのシーク・カジ・アル・ビン・ルサードは、舞踏室に立つアルタリアのキャサリン王女をじっと見つめた。彼女なら条件を満たしている。王位を継ぐため、カジは早急に身分の高い女性と結婚する必要があった。男を寄せ付けないと評判の女らしいが、そんなことは関係ない。僕の魅力にあらがえるはずはないのだから。冷酷な笑みを浮かべ、カジはキャサリンのもとへ歩み寄った。キャサリンは生まれて初めて、手強い男に出会った。隣国のシーク、カジは彼女の拒絶などものともせず、強引に口説いてくるのだ。本当に頭にくるわ!だがキャサリンはカジに内心惹かれていた――決して愛されているとは思えなかったけれど。