ブライズメイドも、招待客も、熱い情熱もなし。教会の待合室で一人、急いで買ったドレスに着替えながら、スザンヌは寂しさを抑えきれなかった。でも、仕方ない。強欲な母との戦いに勝つために、彼女は夫が必要だった。花婿を見つけられただけでも幸運と思わなくてはいけないのだ。アラゴビアの王子、スティーブンは国の政情を安定させるため、会ったばかりのスザンヌを妻に迎えようとしていた。だが、花嫁は彼の素性を知らず、貧乏な外国人だと思いこんでいる。これから始まる王族としての義務をまっとうしてもらうためにも、そろそろ真実を告げるときだろう。スティーブンは先祖伝来のネックレスとティアラを抱え、スザンヌのいる部屋へ入っていった。