ジェイコブ・ウエストはひどく憂鬱な気分だった。家政婦が難病にかかり、治療に莫大な費用が必要だと判明した。なんとしてでも彼女を助けたいが、頼みの信託財産は父親の遺言のせいで、結婚しなければ手に入らない。こうなったら、すぐにでも相手を探さなければ。誰でもいい。結婚など誰としても危険を伴うものなのだから。そうだ、今日から来る新しいアシスタントはどうだろう?これが、金融界の〝アイスマン〟……。クレア・マグワイアは新しい雇い主の存在感に圧倒された。冷たい氷のような、それでいてセクシーな瞳に思わず目を奪われる。いいえ、だめよ。私は誰かに恋をするために来たのではない。ここに来たのは、住み込みで仕事をするため……そして、この防犯設備の整った家に、私の身を守ってもらうためなのだ。