新任のフランス人医師、ジャン・ルク・フルニエを前に、看護師のローレンは大きな戸惑いを覚えていた。初対面のはずなのに、ジャン・ルクを見るとなぜか心がざわめき、ひどく意識してしまう。彼のまなざしも、どこかもの問いたげだ。もしかして……。ある予感がローレンの胸をよぎった。彼女は十年前、インドで医療活動中に嵐に襲われて頭を強く打ち、救出されたものの、一時的に記憶を失ったことがある。今はほとんど回復しているが、怪我を負う直前の記憶――彼女の運命を大きく変えた六週間の記憶だけは、まだ戻っていない。彼は、私の失った過去について何か知っているのでは……?