ハーレクイン・ロマンス記念すべき3,000号はリン・グレアム!!

ハーレクイン・ロマンスの記念すべき3,000号をお届けします。筆を執るのはもちろんリン・グレアム!記念号特別仕様として、貴重なインタビューを収録。

『シンデレラの純潔』
著者:リン・グレアム
定価:710円(税込)
ISBN:978-4-596-13000-6
発刊日:2014年9月20日 発売

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シンデレラの純潔

あらすじ

タビーは両親に捨てられ、掃除人として生計を立ててきた。里親の元で姉妹のように育ったソニアが急死し、タビーは遺された生後6カ月の赤ん坊の後見人となったが、貧乏で独身の彼女に福祉局が養育権を認めるとは思えない。タビーは、共に亡くなったソニアの夫の遠縁で、遺児の共同後見人であるアケロン・ディミトラコスを訪ねた、巨大なビルの最上階にオフィスを構えるギリシアの若き実業家は、恐ろしく背が高くハンサムで、そしてとてつもなく冷酷だった。「その薄汚い女をつまみ出せ」にべもなく追い返された彼女だが、数時間後、アケロンから唐突なプロポーズを受けー。

あらすじ

いらだたしげに吐息をもらし、タビーはアンバーをぎこちなく抱いている男の手からとりもどした。「スキンシップは重要なのよ」そう言ってアンバーの額にキスしてみせる。

「ぼくはそういうこともしないのさ」アッシュはこばかにしたように言った。

「頭を撫(な)で、背中をさすり、安心させてあげるの」タビーは構わず続けた。「そんなに意固地にならないで」

「無理だね。子どもは苦手なんだ。子どもと触れあった経験もないし」

「何事も学ぶのに遅すぎることはないわ」タビーはきっぱりと言って、またアンバーを彼に抱かせた。「しっかり抱きよせてかわいがるの。女性をかわいがった経験ならあなたにもあるはずよ」

「ぼくは女もかわいがったりはしない。女とはセックスするだけだ。だいたいこんな話を子どもの前でするのは不適切だ」アッシュは吐き捨てた。

その剣幕にアンバーがまた泣きだした。アッシュは彼女の背中を不器用にさすった。

「もっと抱きよせて」タビーは彼の肩にアンバーの体を押しつけた。「べつにかみつきやしないわ」

これほど緊張して居心地の悪い思いをするのは、アッシュにとって初めてのことだった。タビーが望んでいるようなことはやりたくないのだ。だが、結婚すれば〈DTインダストリーズ〉が百パーセント自分のものになるのだから、このくらいの犠牲を払うのは致しかたないと自分に言い聞かせ、彼はアンバーをしっかりと抱きなおした。

「話しかけてあげて」タビーが言った。

「何を話すんだ?」アッシュは肩に小さな両手でつかまっているあたたかな存在に身をかたくしながら、真剣な顔で尋ねた。

「何でもいいのよ。あなたの好きな株の話でもね。肝心なのは声の調子や響きなの」

アッシュはギリシアの子守歌をつぶやいた。

「部屋の中を歩きまわれば、あなた自身がもっとリラックスできるかも」

彼は歯を食いしばり、自分がタビーをどう思っているか、敵意は努めて口調に出さないようにしながらギリシア語でアンバーに話しかけた。アンバーは信頼しきった目で彼を見あげ、アッシュは見知らぬおとなをなぜこんなに信頼できるのかと内心驚いた。彼がなおも背中を撫でていると、アンバーは彼の肩に頭をもたせかけた。

「貸して」タビーがささやいた。「もう眠りそうだわ」

「これで今日のレッスンはおしまいか」アッシュは皮肉めかした言いかたをしてアンバーを返し、タビーがベビーベッドに寝かせるのを見守った。薄いグレーのシルクのネグリジェが廊下のほんのりした明かりに透けて、ヒップや腿のラインを浮きあがらせている。それを見て、アッシュは下半身を硬直させた。「ぼくの前ではもう少し着こんだほうがいいんじゃないかな。それともぼくを誘っているのか?」

ドア口に向かっていたタビーはすみれ色の目を見開いてふりかえった。「ご自分の魅力に女は抗(あらが)えないとでも思っているの?」

アッシュは大またに近づいていった。「女に体を見せつけられた男がどうなるかは、きみだって知っているはずだ」

「わたしは見せつけてなんかいないわ」タビーは語気を強めて言い、胸をかばうように腕組みした。ネグリジェの下の体が見えているのかと、ひそかにうろたえる。「あなたがここにいるとは思わなかったのよ」

アッシュは彼女の手首をやにわにつかんで廊下へと引きずりだし、ドアを閉めた。「しかし、その格好は気に入ったよ」やんわりと言う。

タビーは彼の顎にうっすらとひげが伸びているのを見て、その男らしさに胸を震わせた。「だけど、わたしは誘ってるわけじゃないわ」

「ほんとうに?」アッシュは顔を寄せ、彼女の唇の端を軽くついばんだ。そしてその唇が開くと、すかさず舌をすべりこませた。同時に彼女の体を抱きすくめ、背中に両手を這(は)わせて、かたくとがった胸のいただきをちらりと見おろす。

いまのキスにはとてつもないパワーがあった。タビーはもっと続けてほしかった。下腹部に熱い火をつける熱い舌の感触を一瞬もっと求めてしまった。アッシュの手が敏感な胸の先端をかすめ、繊細なふくらみを包みこむ。「やめて」タビーはかすかに身震いした。

「なぜ?」アッシュは暗い目で彼女を見つめた。タビーは彼のキスや愛(あい)撫(ぶ)を求めて口がかわくのを感じた。彼は手をタビーの背にまわし、ジーンズでもごまかしきれない高ぶりを腰に押しつけてきた。「一、二時間、二人で楽しむのも悪くない」

「そんなに軽い女に見える?」激しい憤りを燃やしながら、タビーはかたい声で言った。彼はわたしが一時的ななぐさみものにされて喜ぶと思ってるの?手近に魅力的な相手がいないからって、簡単に手に入る女で妥協しようと?

アッシュはじっと彼女を見おろした。「ぼくは女に対してそのような判断はくださない。女性蔑視になるからね。ぼくは単にセックスが好きなだけなんだ。きみだってセックスは好きなはずだ」

「それはあなたの思い違いよ」やはりこの男も、飲み物をおごったくらいで女を所有する権利ができたと思いこんで、わたしがいやがるのが理解できない、いままでの男たちとたいして変わらないんだわ。暇つぶしのセックスなんてわたしはごめんだ。

「いままでセックスが好きじゃなかったんだとしたら、それは相手の男が悪かったんだ」アッシュはタビーの下唇を指先でなぞりながらささやいた。

タビーは不本意ながらも甘美な戦慄に背筋を震わせ、彼の手から逃れて体を引いた。「あなたの説得力はたいしたものね。だけど、わたしには通用しないわ。たとえバージンでも、男が女をベッドに連れこむためならどんなせりふでも口にするってことは知っているのよ」

「バージン?」アッシュは驚いたように声をあげた。「ほんとうにバージンなのか? それともこれはぼくを深みに引きずりこむための手管なのか?」

タビーはゆっくりと首をふり、それからつい笑い声をあげた。「女に対してずいぶんうたぐり深いのね。わたしはあなたを何かに引きずりこみたいなんて思ってないわ。むしろあなたに深入りするのは非常にまずいと思ってるのに」

「ぼくは深入りしたいわけじゃない。セックスがしたいだけだ」アッシュは言った。「純粋に快楽を分かちあいたいということだ」

タビーは彼が性行為を感情と切り離していることに気づき、よくよく縛られるのが怖いのだと感じた。自分が差しだしているのは純粋に肉体的な快楽だけだと、わたしに念を押しているのだ。「おやすみなさい」タビーはそう言い捨てて向きを変えた。

「バージンだって……嘘(うそ)だろう」深みのあるアッシュの声が静寂の中で追ってきた。

タビーはゆっくりとふりかえった。「ほんとうよ」

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